菌糸ビンの使い方
菌糸ビンとは
菌糸ビンは、きのこの栽培技術を応用した「クワガタ幼虫飼育用のエサ」です。使われるきのこ菌の種類にはオオヒラタケやカワラタケなどがあります。
菌糸ビン飼育のメリット
菌糸ビン飼育のメリットとして、発酵マット飼育よりも大きいサイズで羽化しやすいことがあります。これは、菌糸ビンに使用されているオガがマットよりも生に近く栄養が多く含まれることと、菌糸自体の栄養も摂取できることが要因となっているようです。
菌糸ビンの使い方
丸1日程度、飼育する場所に置いておく
菌糸ビンを飼育する場所に置いておくことで、投入前に菌糸ビンと飼育場所の環境(温度や湿度)を近づけておき、幼虫に環境の変化によるストレスを与えないようにします。
フタを開ける
フタを開けたときに、ビンの上部にきのこが生えていたら取り除きます。
幼虫が潜るきっかけとなる穴を掘る
菌糸ビンの種類によっては、穴があいているものもあります。幼虫のサイズに対して穴が小さい場合には、丈夫なスプーンなどで穴を広げて、潜りやすくします。
幼虫を入れる
幼虫を入れるときはきれいなスプーンなどで入れるとよいでしょう。幼虫を入れたら潜っていくのを確認してフタをします。
菌糸ビンに幼虫を入れると自分で潜っていきます。
潜っていかないときは
幼虫が潜っていかない場合があります。原因として多いものには、
1 暑い
2 酸欠
3 菌糸ビンの種類が変わって馴染めない
などがあります。
対処方法としては、
暑い→適温の環境に移動する
酸欠→ビンのフタを外しティッシュペーパーをかぶせ、輪ゴムで固定して通気を確保する
違う種類の菌糸ビンからの移動で馴染めない→一時的なことが多いので様子を見る、ダメなら元の菌糸ビンに移動する
などがあります。
使用中(幼虫投入中)
きのこが生えてきたら取り除きましょう
きのこが生えると、
1 きのこに栄養を持っていかれる
2 空気穴をふさがれるおそれがある
3 幼虫の生活スペースが狭くなる
などのデメリットが発生するので、見つけたら取り除いたほうが良いでしょう。
きのこが生えやすい条件
きのこが生えやすい主な条件としては、
1 温度差がある
2 湿度が高い
3 刺激がある(ビンの移動や、たたく・落とすなどの衝撃)
などがあります。
温度変化が少なくじめじめしていない場所に置いて、あまり動かさないこと。
これがきのこを出さずに菌糸ビンを良い状態に保つコツです。
新しい菌糸ビンに交換すべきかどうかの判断
菌糸ビン1本だけで幼虫期間を乗り切れる種は限られています。多くのクワガタは幼虫期間中に何度か新しい菌糸ビンに交換をすることになります。
菌糸ビンを見たときに、
1 黒い部分が半分を超えてきた
2 菌糸が縮んで隙間ができている
3 ビンの底に水がたまっている
のどれかに該当すれば、交換のサインとなります。
使用前の菌糸ビンは白い色をしていますが、幼虫投入後には、動いたところがオガの色になり、食べてフンをしたところが黒くなります。この黒くなった部分がビン全体の半分を超えたら交換の目安となります。ただし「居食い」といって外側から見えない内側部分だけを食べ進んでいる場合もありますので、フタを開けて確認してみることをおすすめします。
このほかにも、まれにではありますがカビが生える場合があります。
部分的なものであれば、きれいに取り除いてそのまま使用する場合もありますが、カビの発生が広がりつつあるようなら交換が望ましいでしょう。
サインが出ても交換できない場合も
幼虫から前蛹かさなぎになっていた場合は、新しい菌糸ビンへの交換は行いません。
白い部分が減っただけであれば交換を行わずそのままで問題ない場合が多いですが、菌糸に変色や縮みが見られたり、ビンに水がたまるような状況であれば、すみやかに人工蛹室へ移動することが望ましいでしょう。
菌糸ビン交換のやりかた
交換の手順
1 新しい菌糸ビンを丸1日程度、飼育する場所に置いておく
2 使用中の菌糸ビンから幼虫を取り出す
幼虫を取り出す際は幼虫を傷つけないよう細心の注意を払いながら、マイナスドライバーや丈夫なスプーンなどで掘って行きます。
3 新しいビンに入れ替える
幼虫を取り出したら、新しいビンに入れ替えます。
菌糸ビンの使い方まとめ
1 菌糸ビンは発酵マットよりもクワガタを大きく育てやすい
2 使う前に飼育環境にならすと幼虫にやさしい
3 生えたきのこは取り除く
4 「白い部分が減る」「縮む」「水がたまる」は交換のサイン
5 幼虫の状態によっては交換できない場合もある
6 スプーンは、幼虫の扱い、投入時の穴掘り、交換時の掘り出しに大活躍
菌糸ビンについてのあれこれ
菌糸ビンの劣化について
▼劣化と呼ばれる状態
菌糸が劣化するといった場合に見られる外見的特徴には、
1 変色する(菌糸が白から黄色やオレンジ色に)
2 縮んでビンの内側に隙間ができる
3 ビンに水がたまる
などがあります。
菌糸の劣化が始まるとまず1の「変色」が見られます。さらに劣化が進むと2の「縮み」や、3の「水がたまる」状態が見られます。2や3の状態まで進んだ場合はそのビンの使用はやめましょう。
▼劣化を早める要因
菌糸の劣化を早める要因としては、
1 温度が高めであること
2 温度変化が大きいこと
などがあります。
菌糸を長持ちさせるには、20~25度程度で温度変化の少ない環境が望ましいでしょう。
菌糸ビンの消費期限
使用(幼虫を投入)してからの期限
温度や湿度などの環境や幼虫の食べ具合にもよりますが、幼虫投入から2~3ヶ月くらいを目安にするとよいでしょう。
未使用での保存方法と期限は?
▼1番良いのは冷蔵保存
保存をする際は冷蔵庫に入れ5度程度で保存すると、菌の活動を抑えることができるので長持ちしやすくなります。ただし、菌の活動が完全に停止するわけではないので、長くても6か月くらいまでにしておいたほうが良いでしょう。
▼冷蔵保存できない場合は?
常温の場合、冷蔵よりも保存期間は短い傾向にありますが保管は可能です。できるだけ涼しく温度変化の少ない場所で保管してください。
▼凍らせるのはNG
菌が死んでしまうため、冷凍庫での保管はやめましょう。
▼なるべく早く使うのがベスト
良い保存環境であっても、時間の経過とともに菌糸ビンの栄養分は減少し、また幼虫を投入しておける期間も短くなります。なるべく早く使いましょう。
菌糸ビンあるある
菌糸ビンの上部から発生したきのこが食べられるか気になる。
きのこの種類や状態によっては食べられる場合もあります。オオヒラタケの菌糸ビンから生えたきのこは、油で炒めるとおいしく食べられます。ただし、菌糸ビンの状態や周囲の環境によっては、別の食べられないきのこ菌が付着して発生する場合もありますので注意が必要です。
菌糸ビンについてのあれこれまとめ
1 温度管理ができると菌糸の劣化を抑えられる
2 使用期間は幼虫を入れてから2~3か月が目安
3 未使用で保存するなら冷蔵がよい
4 凍らせるのはNG
5 なるべく早く使う
6 発生したきのこは食べられるものもあるが注意が必要