菌糸ビンとは?クワガタ幼虫の定番飼育アイテム

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菌糸ビンとは何なのか?

菌糸ビンの材料は「培地(オガ屑・小麦フスマ・水)+キノコ菌」

菌糸ビンは「オガ屑・小麦フスマ・水」を混ぜ合わせ熱殺菌した物(培地と呼ぶ)に「きのこ菌」を植え培養した物。キノコを栽培している工場で生産される物がほとんどで、キノコ業界では「菌床(きんしょう)」と呼ばれています。

菌糸ビン

クワガタ幼虫が入っている菌糸ビン

菌糸ビンを使ったキノコ栽培(菌床栽培)

栽培したいキノコ(菌)に合わせて、おが屑・小麦フスマ・水などで作る培地の内容と培養・発生環境を変えて様々な「きのこ」を栽培できます。

プルロット

ヒラタケ系きのこ、クワガタ用菌床はこの系統の菌を使う事が多い。

ヒラタケ栽培棚

菌糸(菌床)ブロックでのヒラタケ系きのこの栽培

椎茸発生棚

シイタケは菌床表面が茶色くなり菌床の仕上がりの目安になる。

雪割茸

ユキワリ茸 一般的な白いエノキ茸の祖先、美味しい

マイタケ

マイタケは菌床ごとに1株(600g前後)発生する。

ハナビラ茸

ハナビラ茸は針葉樹のオガを使わないと発生しない

霊芝

レイシは漢方薬として煎じて飲むキノコ。苦い。

山伏茸

ヤマブシ茸 もこもことしたと所から長いひげが伸びる。調理して食べられるが、乾燥して煎じて飲む事も。

クワガタ用の菌糸ビン・キノコ栽培用は何が違うのか?

基本的にはキノコの栽培で使う菌床と同じ生産工程で作られますが目指す方向に違いがあります。
キノコ用はキノコをいかに発生させるかを目標に作りますが、クワガタ用はキノコ菌でオガの分解は進めつつキノコの発生を極限まで抑える事を目指して作ります。具体的には培地の内容と培養期間や培養温度、食用ではありますが使用している菌が違います。

クワガタ用の菌糸ビンの作り方(月夜野きのこ園の場合)

【工程の大きな流れ】
培地作り→植菌→培養→詰替→培養

【原材料】

「オガ屑」  (キノコ用より細かい)
「小麦フスマ」(キノコ用より少ない)
「水」    (キノコ用より少ない)
「菌}(食用キノコ菌だが培地の分解力が高い物)

【生産工程】

  1. 原材料の攪拌
  2. 袋詰め
  3. 殺菌
  4. 冷却
  5. 植菌
  6. 培養
  7. ビンへ詰替え
  8. 培養

 

クワガタ用の菌糸ビンが出来るまでを写真で紹介

オガ倉庫

オガ倉庫、数種類のオガが保管されている。クワガタ用のオガは特注でフレコンバック(大きな袋)で別管理する

ミキサーオガ入れ

ミキサーに培地の基材となるオガを投入する。

ミキサー混合前

ミキサーに小麦フスマを入れ混合、その後水を加えながら更に混ぜる。

フスマ

小麦フスマを手に取った様子。奥はおが屑

ミキサー攪拌

ミキサーで攪拌しムラのない培地を作る。

袋詰め機

耐熱の袋に培地を詰める。この時点では「キノコ菌」は入っていない。

殺菌釜

殺菌釜と呼ばれる装置。大きな圧力釜で温度は100℃以上にできる。1つの釜に培地が1,000個以上入る

放冷室

滅菌した培地はクリーンルームで冷やす。(緑のトレーに載っているのが培地、台車に100個以上載っている。)

植菌室ブース

クリーンルームの中にあるクリーンブースで「キノコ菌」を植える。雑菌が混入すると取返しが出来ない事態になる。

菌床植菌受け取り

クリーンブースで「キノコ菌」を植えて外に出てくる所、菌を植え封をした状態で出てくる。

クワガタ菌床植菌直後培養室

キノコ菌を植えてから3日程度の様子。袋内に白く見えるのが植えたキノコ菌

植菌後の発菌の様子 ブロック側面

キノコ菌の種の部分から培地へ菌が伸びている様子。

クワガタ菌床植菌後10日

白い部分がキノコ菌が伸びている所、種を植えてから1か月で全体が白くなる。

クワガタ菌床培養完了

袋全体が白くなってから、さらに培養をしてキノコ菌にオガの成分を分解してもらう。

培養後ブロックを割った所

培養完了後のブロックを割った様子。オガの成分(リグニン)が分解されて明るい色になっている。

菌糸ビン詰め替え培養

培養完了したらビンに詰め替える。培養の時より密度を高めてビンに詰め替える。

菌糸ビン詰め替え直後

詰め替えた直後の菌糸ビン。この中にはキノコ菌が詰まっている。

クワガタ菌床培養室

ビンに詰め替えてからさらに培養する。

菌糸ビン白く発菌

詰替えてからの培養が完了し完成した菌糸ビン。原材料の投入から2カ月以上かけて完成する。

なぜ菌糸ビン飼育なのか

オオクワガタ幼虫の飼育は、ここ数十年間で「材飼育」「発酵マット飼育」「菌糸ビン飼育」と進化し飼育期間の短縮、個体の大型化が進んできました。現在では大型個体を飼育する為に「菌糸ビン」は必須のアイテムになっています。

ではなぜ菌糸ビン飼育は速く大きく育つのか?「材飼育」「発酵マット飼育」とは何が違うのか?それは菌糸ビン内で生きているキノコ菌が木の成分「リグニン」を分解し、幼虫がその他の成分を消化吸収しやすい状態にするからだと考えられます。

菌糸ビンに使用されている菌(ヒラタケやカワラ茸など)は白色腐朽菌と呼ばれ、木の成分「セルロース」「ヘミセルロース」と同等に「リグニン」を分解できる事が特徴です。

自然界ではオオクワガタの幼虫はカワラ茸などが発生している木に生息していて、子孫を残すのにメスがより良い場所と判断し産卵していると考えられます。

カワラ茸

倒木に発生したカワラ茸

カワラ茸2

立枯れした木に発生したカワラ茸

菌糸ビンは白色腐朽菌で分解された木を再現した物

産卵セット

産卵セット幼虫

 

菌糸ビンとは何なのか? まとめ

1 菌糸ビン(菌床)は自然界の白色腐朽菌の入った木を再現しオオクワガタの産卵も可能です。
2 菌糸ビンはキノコ菌が木を分解する能力を利用し幼虫を大きく育てる不思議なアイテムです。

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