幼虫飼育における菌糸ビン交換とは
菌糸ビン交換はなぜ必要か
クワガタの幼虫飼育には時間がかかります。交換なしで最初の菌糸ビンだけで成虫まで育てられる種もいますが、多くの種で菌糸ビン交換が必要になります。
菌糸ビン交換の判断ポイントは
交換するかしないかの判断を誤ってしまうと、
・まだ食べられるエサを捨ててしまう
・栄養のほとんど無くなった菌糸ビンを与え続けてしまう
・菌糸ビンの環境が悪くなり、虫が弱ったり死んでしまう
などもったいないエサの使い方をしてしまったり、虫の成長にマイナスになってしまうことがあります。
菌糸ビン交換をするかどうかの判断ポイントは大きくわけると「幼虫の成長段階」と「菌糸ビンの状態」です。期間での判断はあくまでも目安にするにとどめておきましょう。
幼虫の成長段階の見極め方
幼虫の成長段階を大きく2つにわけると、成長期の「エサを食べる幼虫」と、蛹になる準備段階の「エサを食べない幼虫」に分かれます。
1.エサを食べる幼虫
エサを食べる幼虫には、
・白からやや黄色がかった体色
・手や口が動く
といった特徴があります。
2.エサを食べない幼虫
幼虫期間の終わりの時期は蛹になる準備段階で、エサは食べず、蛹になるためのスペースを作るために動きます。
・体色は黄色味が強くなってきている
・手や口が動かない
といった特徴があります。
このような状態を前蛹(ぜんよう=蛹の前段階)と言います。前蛹状態になっていた場合の対処方法は、また別の記事でご紹介いたします。
3.蛹(さなぎ)になっていたら
蛹になっていた場合の対処方法は、また別の記事でご紹介いたします。
幼虫の確認方法
容器の外側から見える場合は、目で見て確認してみましょう。見えない場合には「露天掘り」をして確認してもよいでしょう。
露天掘り
露天掘りは中にいる虫の様子を確認するために、エサの上部を掘っていく方法です。幼虫のいるスペースに掘ったものが落ちないよう、すこしずつ慎重に掘りましょう。
今回の記事では、上記のうち「エサを食べる幼虫」に焦点をあてて、次章から菌糸ビンの状態別対処方法をご紹介してまいります。
まとめ
1.菌糸ビン交換は多くの種で必要
2.判断のポイントは幼虫と菌糸ビンの状態
3.幼虫期間の最後はエサを食べなくなる
4.幼虫の状態はなるべく目視で確認する
菌糸ビンの状態別対処方法(エサを食べる幼虫の場合)
交換が必要な場合
外側から見て白い部分が半分以下になった→【!交換】
使用前の菌糸ビンは白い色をしていますが、幼虫投入後、動いたところがオガの色になり、食べてフンをしたところが黒くなります。もともとの白い部分がビン全体の半分以下になったあたりが交換の目安となります。
ただし、黒が少なくオガの色の割合が多い場合、蛹化が近付いた幼虫が動き回っているだけの可能性が考えられます。その場合、新しい菌糸ビンに移しても同じことを繰り返し、エネルギーを浪費するだけとなるおそれがありますので、交換はせず様子を見たほうがよいでしょう。
菌糸ビンが「劣化」してきた→【!交換】
菌糸ビンは時間の経過とともに「劣化」と呼ばれる状態変化が起こります。特徴としては、元の白い状態から黄色やオレンジ色への変色が見られ、さらに進むと中身が縮みビンの内側に隙間ができます。さらに進むと底に水がたまる状態が見られます。
菌糸ビンを確認した時に、「ビンの内側に隙間ができた」状態が見られれば交換したほうがよいでしょう。
菌糸ビンがパサパサに乾いている→【!交換】
幼虫を育てるには菌糸ビンに適度な水分が必要になります。オガに触って湿り気が感じられないようであれば、水分不足であると考えられますので交換したほうがよいでしょう。
対処が必要な場合
菌糸ビンにきのこが生えた→【△対処】
きのこが生えただけでは、交換は必要ないと考えられますが、対処は必要です。
▼きのこが生えた場合のデメリット
1.きのこに栄養を持っていかれる
2.空気穴をふさがれるおそれがある
3.幼虫の生活スペースが狭くなる
などのデメリットが発生するので、見つけたら取り除いたほうが良いでしょう。
▼きのこが生えやすくなる環境
1.温度差がある
2.湿度が高い
3.刺激がある(ビンの移動や、たたく・落とすなどの衝撃)
などがあります。
上記の生えやすい環境にならないよう、温度変化が少なく、じめじめしていない場所に置いて、あまり動かさない。
これがきのこを生やさずに菌糸ビンをよい状態で保つコツです。
菌糸ビンにカビが生えたら→【△対処】
アオカビが部分的に発生しているだけであれば、取り除ける範囲は取り除き、取り除けない範囲はひとまず様子を見て、全体に広がるようであれば交換したほうが良いでしょう。
菌糸ビンに水がたまったら→【△対処】
水がたまっていたら、ビンを逆さまにしてたまった水を抜いたほうがよいでしょう。水の通り道が無くそのまま抜けない場合、ビンの両側を押して、中身を少しへこませ、その時できた隙間を通して抜く方法もあります。押す方法の使えないガラスビンの場合には、幼虫を傷つけないよう注意しながら、固い棒などで菌糸の端を掘って水の通り道をつくるとよいでしょう。
様子を見る場合
幼虫の食痕(食べた形跡)が見られない→【…様子見】
幼虫の食痕が容器の外側から見られない場合、死亡していて動きがないということもありますが、菌糸ビンの内側をじっくり食べて元気に成長している場合もあります。この状態は居食い(いぐい)と呼ばれ、外側に向かって食べ進む幼虫より大きく成長する傾向もみられます。
月虫では菌糸ビンの交換目安は3か月程度と考えています。投入から3か月まではそのまま置いておき、3か月経過後に生存確認を行い、その時の虫の状態に応じて交換や対処の判断をするとよいでしょう。
菌糸ビンの内側が結露している→【…様子見】
菌糸ビンの内側の結露はさほど気にしなくてよいでしょう。
まとめ
1.菌糸ビンの状態を見極めよう
2.エサ切れや乾燥に注意
3.交換以外の対処方法もある
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