虫捕る子だけが生き残る を読んでみた!
~脳化社会の子どもたちに未来はあるのか~
今回の書籍紹介は「虫捕る子だけが生き残る」というセンセーショナルなタイトルの本です。
サブタイトルとしまして、
~脳化社会の子どもたちに未来はあるのか~
とあります。以前からとても気になる本でしたので、今回実際に読んでみました。
今回のこの書籍ですは対談形式の本ですが、何と言っても登場人物がこれまた豪華です(笑)
テレビでもすっかりおなじみ、池田清彦先生
ファーブル昆虫記で有名、奥本大三郎先生
そして大御所、バカの壁で有名な養老孟司先生
のお三方です!
では早速ご紹介に入りたいと思います。
第一部 虫捕る子だけが生き残る
この本は主に3部構成になっておりまして、その第一部がこのタイトルです。読んでみますと、なぜに昆虫採集が良い(幼少期の遊びとしてオススメ)のかに関して、語られております。
全ての内容をお伝えするわけにはいきませんので、要所要所を掻い摘んでご説明致します。
まず第一に、なぜ今昆虫採集をあえてオススメしているのか、なぜしたほうが良いのか、に関してのお三方の共通認識から入っております。現代病というに近いイメージのようです。
「人間は、概念より感覚から先に入らないとダメなんだ」
「先に概念を教えようと、叩きこもうとするからリアリティがなくなってしまう」
「リアリティのない人間に限って、平気な顔して人を傷つけたりする事ができるんだ」
昆虫採集をやる事により、辛抱強さが身につく(魚獲りも同じ)、思い通りにいかない事に対しての我慢強さが身につくと言います。そして加減(力加減も含む)という感覚が身につく、小さな昆虫を掴むときにも強すぎてはつぶしてしまうし、弱すぎると逃げられてしまう。自分の感覚で技術を身に着けて、それをアウトプット(実践)する、この繰り返しこそが脳を鍛える事になる、との事です。
なるほどなぁ、と感じてしまいます。
概念化。なかなか難しい言葉ですが、例えば奥本先生曰く、「4~5歳くらいの子供が描く昆虫の絵と、小学校3年生以上の子供が描く絵は全然違う。
後者は概念が頭に入っているため、既に知識として頭の中で概念化されている昆虫の絵を描く」※例えばカブトムシにはツノが生ええているという事を知っているため、ツノから描く、など。
後半には現在の教育システムや教育方法にも言及していきます。皆さま実際に大学で教鞭をとっておられる立場の方々ですので、自然と気持ちが入ります。
なかなか過激なキーワードも噴出しますが、要するにマニュアル化された教育学問も体育も、何もかも、それこそがまさに良くない。マニュアル化された練習方法をただひたすら行う、これはまさに体育のファシズムだと(笑)
いや、笑いごとではありませんね。
見てきましたように、昆虫採集という一つの遊びの中にも、実にいろんな意味、意義があるものなんだなと勉強させられました。
思い通りにならない野生の昆虫たち、それを何とかして捕まえようと、あの手この手を考え実践しようとする人間。そして時に無残にも惨敗し、トボトボと河原や里山を後にするその悔しさ。一転、お目当ての昆虫と偶然出会い、運良くも捕まえる事に成功したときのこの至極の喜び。この非効率、これも人生の教えとも言えるのでしょう。そこに万人共通の完全マニュアルなどは存在しません。
先生方の熱い対談を追っていきますと、ついつい引き込まれていくようです。第一部はいきなり、この濃厚なやりとりが展開されていきます。実にその5割近くがこの第一部となっております。
第二部以降は、環境問題や各先生方の将来への希望、夢、そういった事に関しまして対談が続きます。
ですが、後半はあえて書籍のご説明などはせず、月虫的な見解にて、各先生方の放った、グッと来る、または「へぇ~」っとなるようなお言葉を切り取りましてご紹介させて頂きます。気持ちを軽くして読んで頂ければと思います。
印象に残った発言集(笑)
その1 第一部の序盤にて
奥 虫も減ってしまっているけど、虫を捕る子どもはもっと減ってしまった
奥 絶滅寸前でしょう
池 でも面白いのは、ムシキングのようなバーチャルな虫はものすごく流行っているんですよ
そこで養老先生
「バーチャルな虫は、虫じゃねぇ」
その2 環境問題や土壌汚染の話の中で
奥 虫の場合は餌にも菌類が混ざってますよね
池 クワガタは菌を食べてますしね。昔はそれがわからなくて、餌に蜂蜜を混ぜたりとか馬鹿な事をしてた
奥 生木をミキサーにかけて味の素と蜂蜜と砂糖を混ぜて
池 小麦粉も混ぜたりしたけど、クワガタがちっとも大きくならない(笑)
池 クワガタの幼虫はキノコの菌を食べてることが後にわかり、もしクワガタがとでも重要な昆虫だったら、ノーベル賞ものの大発見ですよ!
上記以外にもたくさんの面白トークが展開されておりますので、グイグイ読み続ける事ができます。
感想
さて最後に月虫的な感想ですが「なるほどな」と勉強させられる、そんな印象の書籍と言えます。
特にこの対談が、とても説得力のある先生方によって行われておりますので、素直に聞き入る事ができます。
虫愛、少なくともこれを感じ、何か自然や自然生物に対する畏敬の念も強く伝わってきます。
もしかしますと、自然に対しての人間の謙虚さ、こういった気持ちも持ち合わす必要性を説いているのかもしれません。
200ページに満たない書籍ですが、内容は充分、もちろん読み応えのある対談に大満足できます。
虫捕る子だけが生き残る を読んでみた! まとめ
1 小学校に入る前から、昆虫採集を行った方が良い、との事
2 概念や言葉から先に入らず、感覚から先に入る方が良い、との事
3 昔は今では考えられない方法でクワガタの飼育を行っていたようですね。
4 バーチャルな虫と自然界にいる虫にはやはり違いがある。